海外生活が長い帰国子女は、時に自身のアイデンティティに悩むことがあります。
自分を形成するものは一体何なのか、そして自分はどの国やどういった集団に帰属するのかといった問いは、幼少期を長く海外で過ごした帰国子女にとって難しい問題になることもあります。
そのギャップを埋めるために、日本の伝統的な文化体験が役立つことがあります。
帰国生とそのアイデンティティ
帰国子女とは、海外で生まれ育った子どもたちのことを指します。
そしてアイデンティティとは、「存在証明」や「自我同一性」と日本語で表すこともありますが、自分が自分であることを確信すること、他者や社会から自分がきちんと認識されていると理解することを意味します。
帰国子女が日本に帰国すると、日本の文化や社会に適応することが大きな課題となります。日本で周囲とうまく馴染めなかったり、生活習慣の違いを指摘されたりした時、「自分は日本人なのに日本人ではない」、「周囲と違う自分は日本の社会で仲間になれない」といった思いにとらわれてしまうことがあります。
しかし、日本の伝統文化に触れることで、彼らが自分自身を見つめ直し、自己アイデンティティを確立する手助けになることがあります。
日本の伝統文化とは
日本にはさまざまな伝統文化があります。代表的なものに、茶道、華道、着物、武道、日本舞踊、和太鼓などがあります。これらの文化に触れることで、帰国生は日本人としてのアイデンティティを見つけることができます。
こうした文化は、日本人の美意識や精神性を表現したものでもあるため、帰国生が日本の伝統文化に触れることで、日本人としての精神的な成長にもつながることがあります。
茶道のためお茶のお稽古に通う、武道の鍛錬をするというように大げさに考えず、まずはできることから始めても良いでしょう。
例えば、次のような体験です。
①着物を着て街を散策する
観光地では、好きな着物が借りられるアクティビティがあり、着付けをしてもらって街を歩く体験ができます。たくさんの着物に触れて伝統的な柄や色の取り合わせを見ながら、その美しさに触れるのがオススメです。
七五三を経験していないお子さんなら、写真館やスタジオで写真を撮るのも良い思い出になるかもしれませんね。
②日本の文化がえがかれたアニメや漫画、本を読む
たくさん購入しなくても、図書館やYouTubeの公式チャンネル、ストリーミングサービスを利用すれば色々なコンテンツをお得に楽しむことができます。
「アニメを知らなくて学校で話題についていけない」、「セミが鳴く、こたつでみかんといった一般的な風物詩にピンとこない」というギャップは、こうしたコンテンツで補うこともできます。
③部活動で伝統的なことに触れる
学校の部活動は、初心者も多く、同世代の子どもたちと一緒に学べるというメリットがあります。茶道部、華道部、弓道部は活動している学校が少ないかもしれませんが、書道は授業で行えます。また、剣道部や柔道部といったスポーツ系は公立の学校でもほとんどが活動しているはずです。
④地域の体験イベントに参加する
夏祭りや、和太鼓体験、低学年のお子さんなら折り紙や工作教室など、地域で開催されているイベントも見逃せません。同じ市内や町内で構成されるイベントなら、居住区に馴染む意味でも参加する意義はあると言えるでしょう。
難しく考えなくても、できる身近な体験からしてみませんか?
⑤地方の宿泊学習・キャンプに参加する
地方では、古民家の宿泊体験や、伝統文化の工場体験といった学習を提供しているところもあります。
サマーキャンプのような感覚で、一夏の文化体験を計画するのも良いでしょう。こうした宿泊学習は、日本で暮らしている子どもでも体験できないことが多く、日本の文化や歴史について知る上で重要な経験になるはずです。
伝統文化体験がもたらす効果
伝統文化の体験は、自己アイデンティティの確立につながることがあります。体験することで帰国生が自分自身を見つめ直し、自分のルーツを再確認することができます。
帰国子女の成長にとって、海外での生活を否定することなく、日本の伝統的な文化とともに多様性を自己の中に見出していくのが理想です。
まとめ
帰国子女が日本の伝統文化に触れることは、彼らが自己アイデンティティを確立する上で非常に重要な役割を果たします。また、伝統文化を体験することは、日本人としてのアイデンティの確立だけでなく、人とのつながりやお互いに尊重し合うことの大切さを教えてくれます。
日本の伝統文化は、日本人の美意識や精神性を表現したものであり、それらに触れることで帰国生は精神的な成長を遂げることができます。
例に挙げたような身近なところから、まずは一つずつ楽しみながら体験していってはいかがでしょうか。