今回は、帰国子女教育の概要と、帰国後の帰国子女のメン タルケアについて紹介します。
海外と日本で大きな環境の変化を経験した帰国生は、プレッシャーやストレスを感じやすい生活を強いられることがあります。
どの程度なら、自然に適応するのを待つべきなのか、またカウンセリングが必要となるケースはどのような場合なのか、悩める保護者の方に寄り添い、考えていきます。
帰国子女教育で重要なこと
そもそも帰国子女教育とは、海外生活を送ってきた子どもたちが日本へ帰国した後、日本で生活できるように行う教育全般を言います。
海外子女教育という言葉もあり、海外での日本人学校や補習授業を行うサポート的なスクールも広い意味ではこれに含まれます。
こうした帰国子女教育において大切なポイントは、次のようなことです。
1.文化的な理解と適応
異なる文化で育った帰国子女は、日本の社会や習慣に適応することが課題です。
異文化に対する理解と尊重を促し、柔軟な思考とコミュニケーション能力を養うことが必要です。
2.バイリンガル教育・日本語の習得
帰国子女は家庭や日本語学校では日本語、通常の学校では英語(外国語)といったバイリンガルな環境で過ごします。
帰国後は、その言語力を活かしながら、日本語の語彙を増やしていく教育が必要です。
日本語の正確な表現や読解力を育むことで、学業や社会での適応性が向上します。
3.サポート体制の構築
学校や関連団体のサポートを活用して、帰国子女が安心して日本で生活していける土台を作るのも重要です。
言い換えれば、教育機関や地域のコミュニティは、帰国子女とその保護者に対して適切なサポートや情報提供を行うことが求められることになります。
帰国子女がストレスを受けやすい事柄とは
帰国生は、海外での生活が長ければ長いほど、日本の生活に戸惑いを覚えることも増えるでしょう。
帰国子女が日本に帰国した際にストレスを受けやすいシーンを、カルチャーショックとホームシックの2つのトピックに分けて解説します。
カルチャーショック
学校生活での違和感は、避けることができません。
帰国子女は、日本と海外で異なる教育システム、そして学習習慣に適応する必要があります。
友人関係や学業のプレッシャーによるストレスが生じることもあるでしょう。
また、友達同士でも日本のローカルルールや暗黙のうちのマナーが分からずに、コミュニケーションを取りにくいと感じることもあります。
こうした文化の違いや育ってきた背景の違いが、ギャップとなって蓄積しストレスになってしまうケースが多いようです。
ホームシック
友人や環境の喪失感も、ストレス要因になります。
帰国することによって、海外で築いた友人関係、および慣れ親しんだ環境を離れることになります。
海外生活になじんでいればいるほどに、新しい環境での適応に戸惑いや寂しさを感じるでしょう。
また、海外になじんでいると、帰国後に文化的なアイデンティティの喪失感を経験することがあります。
例えば、日本人らしさがない自分に悩んだり、帰国子女という自身のアイデンティティに過分な期待や憧れを抱かれたりすることで、自分とのギャップに苦しむことがあります。
帰国子女にカウンセリングが必要な場合とは
どのような人でも、ストレスは抱えて生活するのが普通です。
ただし、時にはストレスが大きすぎて生活に支障をきたすこともあるため、そんな時は専門家のサポートをお願いする必要があります。
例えば、日本に帰ってきた帰国子女にカウンセリングが必要な場合には、次のようなものがあります。
・不眠や食欲不振、抑うつの症状が見られる
・スクールカウンセラーとの相談が不十分と感じる
多少のストレスや悩みなら、本人が適応するのを静かに待つか、スクールカウンセラーなど学校と連携をとって見守るのが得策でしょう。
しかし、何らかの原因でスクールカウンセラーに頼ることができない、また明らかに不眠や食欲不振といった状態に悩まされたり、極端に抑うつ状態にある場合は、プロのカウンセラーの支援が必要です。
心理的なサポートを通じて、適応に向けた健康な心の状態を取り戻すように動いていきましょう。
悩みや不安は第三者と共有して成長を目指す
帰国子女とその保護者が、「自分たちの悩みは本人にしか理解できない」と閉鎖的な感情をもってしまうのは当然のことです。
しかし、悩みや不安を教育機関や専門家と共有することで、心の負担を軽減することができます。
オープンなコミュニケーションを心がけて、時にはカウンセリングやサポートグループなど、専門家の支援を受けることも考慮しましょう。
まとめ:帰国子女の心に寄り添い必要なら適切なケアを
帰国子女教育において、ホームシックやカルチャーショックといった心のケアは重要です。
必要な場合には、心の健康を守るために適切な手段を積極的に活用していきましょう。
帰国子女の心のケアは、日本になじむためと、お子さんの健康な成長に欠かせないことです。
ご家庭で抱え込むことのないよう、学校やサポート機関をうまく活用してくださいね。