海外生活が長い帰国子女にとって、時に日本語は母語と言えない場合があります。
特に、幼い頃に海外に渡航してそのまま数年過ごすと、外国語の方が得意になる、考える思考回路が日本語ではなく外国語になる、ということがあります。
このような時、帰国してそのまま日本で生活するならば、日本語の再習得を目指す必要があるでしょう。
帰国子女の言語習得
言語習得は、多くの大人にとって難しいものです。
しかし、最も言語習得に最適と言われる3〜6歳くらいの年齢で海外生活を経験すると、母語よりも外国語(英語)が身近になる可能性があります。
一般的に、バイリンガルに育てるならばこの時期に外国語を習得させる方が良いと言われているのは、そのためです。
好奇心に満ちていて、耳もよく、脳が言語習得に向けてよく発達していく時期に触れた言葉は、その人のアイデンティティの一つとなっていくのでしょう。
言葉に慣れれば、それだけ外国でのコミュニケーションも容易になるので、友達を作ったり、その国に馴染んで楽しく生活したりするにはとても良いことですね。
帰国生の課題:二言語習得
一方で、数年を海外で過ごして帰国する帰国子女には、言葉が課題となってしまうケースがよくあります。
日本に帰国する子どもたちの中には、海外で長期間過ごしたために英語が得意ではあるが、却って日本語がうまく使えなくなってしまったという子どもがいます。
こうした帰国子女は、例えば、幼児期の語彙しか習得していないために年齢よりも幼い話し方になってしまう、敬語が使えない、成長して複雑化していく心のうちや気持ちを表現できる日本語を知らずに口数が少なくなる、という困難を抱えています。
幼い頃はあまり気にならないかもしれませんが、一定の年齢以上になると、日本語での語順が英語のそれと同じになる、文法的に正しくない話し方、書き方しかできないというのは、日本で社会生活を送る上では問題となってしまいます。
特に、日本は世界的に見ても識字率の高い国として知られています。ほとんどの日本人が書けて当たり前、読めて当たり前という前提で暮らしているので、漢字が読めない、簡単な語彙しか知らないというのは、本人にとってもつらいことです。
また、日本語と英語を同時に習得している帰国子女でも、言語の使い分けに苦労することがあります。日本語と英語の混合した表現を「Japanglish(ジャパングリッシュ)」といいますが、こうしたスラング的な言葉から抜け出せない帰国生もいます。
進路で変わる帰国子女の言語習得
帰国子女がどのような進路を望んでいるのかによって、二言語習得の重要性は変わります。
例えば、海外での生活に疲れて、自分はできるだけ日本で進学・就職をしていきたいと思った場合、極論を言えば英語(外国語)は忘れてしまっても問題ありません。
むしろ、日本語をしっかりと習得しなければ入試にも問題があるため、英語力を保持しようと考える前にまず、日本語に慣れてボキャブラリーを増やしていく必要があります。
一方でなるべく早く留学などで海外に戻りたい、長期留学や移住も視野に入れているという場合は、日本語も習得しつつ英語(外国語)を忘れないようにバイリンガルの状態をキープしておく必要があります。この場合は、必要に応じて英会話教室に通ったり、外国語を母語とする人と定期的にコミュニケーションをとったりするのも語学力を保つ良い方法です。
コミュニケーションと好奇心を忘れずに
言語習得には、まず聞き取りが重要です。言語を習得するためには、まずたくさんの言葉を聞くことが必要です。そして、自分で話してみることで、徐々に自然な発音や表現が身についていきます。このような習得方法は、日本語や英語だけでなく、どの言語でも有効です。
そのため、日本語を忘れてしまって恥ずかしいと退いてしまうことなく、積極的に他者とコミュニケーションをとっていくと良いでしょう。
日本の文化や言語を外から眺める良いチャンスと思って、好奇心を忘れない気持ちでいるのも大切です。
帰国生に英会話教室という選択肢も
帰国生には、日本語と英語を同時に習得するという課題があります。
英語を忘れたくない、受験や進路でさきざきに英語力を活かしたいという場合は、英会話教室に通って海外に通用する国際的な検定試験を受けていくのもおすすめです。
また、留学体験ができるような英語オンリーの習い事をするのも、海外生活を忘れないためには良い手段となるはずです。
まとめ
日本に帰国した子どもたちは、日本語と英語の二言語を同時に習得する課題に直面します。
しかし、難しく考えることなく、海外生活という貴重な体験を大切にしながら少しずつ日本での生活に慣れていくことが一番大切です。
言語習得に焦りは禁物、一歩ずつ日本の言葉のもつ響きや文化に触れながら、楽しんで習得していくのが良いのではないでしょうか。